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Difficult Polyp 直径4cmの亜有茎性大腸ポリープの切除

 最近、とある患者さんが来院。まだ、50歳前というのに、聞けば、S字状結腸に亜有茎性の約4cmの大腸ポリープがあって、都内の有名な国立病院で開腹手術を勧められているという。しかし、患者さんは、いろいろな社会的・家庭的諸事情で、どうしても、おなかを開けたくない。そこで、何とか、内視鏡的にその大きな大腸ポリープを切除できないものかと思い、インターネットで調べ上げて、「この先生なら、内視鏡で大腸ポリープを取ってくれるのでは!?」と思い、私のところに来たとのこと。

 

 確かに、私は、これまでに4cm以上のポリープを、百個単位の数字で、内視鏡的に切除してきている。最高6cmの大腸ポリープも内視鏡的に切除したことがある。ただし、固有筋層まで浸潤した進行癌や、粘膜下層の深くに浸潤した癌は、内視鏡的に切除できない。内視鏡的切除の適応条件は、大腸の場合、病変が粘膜内に留まるか、もしくは、浸潤しても病変が粘膜下層の浅くにとどまることである。

 

 「なぜ、開腹手術を勧められたのですか?」と聞くと、「病理検査でははっきりと癌細胞が見つかったわけではないが、バリウム造影によるレントゲン検査で大腸壁の変形が強く、病変の一部が癌化して、粘膜下に深く浸潤している可能性があるから。」といわれたとのこと。「病理検査で腺腫であっても病変の一部が癌化していることも多く、取らなければ、癌が進行する危険性が高い。」ともいわれたそうだ。

 確かにそれは正しい。だが、大きなポリープの表面の組織検査で、腺腫の診断が出ている場合、仮に、病変の一部が癌化しているとしても、一般に、80-90%の病変は癌が粘膜下に浸潤していない。また、亜有茎性のポリープの場合、バリウム造影レントゲン検査の深達度診断の正診率は50-70%ぐらいでそんなに高くない。

 

 そこで、拡大内視鏡で、病変をみた。表面には、浸潤に特徴的なびらんはなく、浸潤を示唆する微細文様、pit pattern Ⅴnもない。ただし、病変は大きく、大腸の管腔をほぼ塞いでいて、切除は技術を要する状況である。

 熟練した内視鏡医なら、こういった病変は、まずは取ってみるとしたものである。取った標本をみて、病変が癌化していたどうか、粘膜下層まで癌が浸潤してるかどうか、そして、癌の転移のリスクファクターの有無(すなわち、癌細胞の血管やリンパ管への浸潤と癌先端の組織の異型度)を正確に診断して、その後、追加の開腹手術リンパ節郭清手術が必要かどうか、判断するわけである。組織を顕微鏡で見れば、診断は99.9%正しい。治療方針を正しく決めるためには、内視鏡的切除が一番正しい診断方法でもあるのだ。(こういうのを、治療的診断とも、診断的治療ともいう。)

 日を改めて、内視鏡的切除を行った。ちょっとしたテクニックを使って安全にきれいに病変を切除した。術後は穿孔と出血を避けるために2-3日入院してもらった。病理結果の結果、腺腫内には、巣状に癌細胞の集団があったものの、腫瘍は粘膜下に浸潤しておらず、追加の開腹手術は、とりあえず、不要となった。

 

 ある疑問が湧き、「その国立病院では、どんな先生に診てもらいましたか?」と患者さんに尋ねた。「まず、若い先生に診てもらい、大腸検査も痛かったです。そこで、まず、すごく不安になりました。さらに、その後、いろんな先生が出てきて、なんだか、「たらい回し」された感じでした。」とのこと。

 今、一部の公立病院では、熟練した医師が、過剰勤務と相対的に低い給与体系から、燃え尽きてしまっているという「うわさ」だ。何せ、病院に支払われるお金の多寡は、看護師の数や病名で決まるのであって、ポリープの取り方のうまさで決まるのではないのである から。