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世界の大腸癌検診の動向  今秋の日本及び欧州消化器病週間 から 

 大腸癌は予防が大切である。大腸進行癌は、FOLFOX、FOLFILIやアバスチンなどの化学療法、ネオアジュバンド療法が進歩して生存期間の延長が認められるとはいえ、死亡率は改善されていない。

 欧州消化器病週間で、ドイツ消化器病学会の大御所クラッセンが、指定講演で、大腸癌検診について述べた。がん検診が未発達の旧東欧諸国の大腸癌5年生存率は、約30%、がん検診がある西欧諸国では大腸癌5年生存率は約50%と述べた。検診をすることで、大腸癌死から助かるチャンスが増大するのである。

 札幌で開かれた日本消化器週間で、アメリカの大腸癌検診協会長の招待講演があった。アメリカでは、便潜血反応よりも、S状結腸鏡や大腸内視鏡検査を用いることが多く、とくに、ここ2-3年、大腸内視鏡を受ける人が増え、検診対象年齢の人口の30%が受けるまでになっていると発表した。耳を疑うほどの高率であるが、これにより、大腸癌の死亡率が急激に減ってきているという。レーガン大統領がポリープを取ったときから、大腸内視鏡が広まり、大腸癌は内視鏡検査で完全に予防できるので、「自己責任の病気」と呼ばれて、大腸内視鏡がさらに広まっているという現状なのだそうだ。ちなみに、アメリカでは発見したポリープ(腺腫)はどんなに小さくても、すべて切除するのが原則であるとのこと。

 日本では、便潜血反応陽性者が内視鏡検診に廻される。日本で便潜血反応による大腸癌検診が始まったのが1988年。中曽根内閣の老人健康保険法に基づく。そのころは、腺腫は前癌病変なのですべて切除すべきというのが常識であった。それまで、5年で2倍に増えていた大腸癌死亡者数が、この検診の開始を境にして、増加しなくなりむしろ減少し始めた。日本全体で年間大腸癌死亡者数は4万人から3万5千人ぐらいに低下してきていた。当時、私は先輩の先生勧めで、東急百貨店でCLEAN COLONを目指す内視鏡による大腸癌検診を行い、東急百貨店保険組合の被保険者を大腸癌から10年にわたり完全予防してきた実績を残している。

 それが、90年代後半、工藤先生が「隆起型のピットパターン3L型の5mm以下の腺腫はすぐに取らなくても良い。」と学会で述べた後、医療費抑制の波とあいまって、学説が一人歩きして「5mm以下のポリープは取らなくてもいい」という考えが広まって、かなりの先生方が、小さなポリープを無視しはじめた。それで、どうなったかというと、近年、日本の大腸癌死亡者数は再び増加傾向に転じているのである。日本とアメリカの大腸癌死亡者数の動向を見ていると、日本も、大腸癌検診の中心を、便潜血反応から大腸内視鏡検査にシフトさせる必要があろう。

 また、腺腫はやはり全部取るべきであろう。 私は当初から工藤先生の考えには反対であり、すべての腺腫はどんなに小さくても見つけたら切除してきたし、切除するべきと唱えてきた。つまり、CLEAN COLONを目指した内視鏡を実践してきた。私の小さなポリープまで取るやり方は、各保険組合から不況時にいろいろと批判された。しかし、今回のアメリカと日本の大腸癌死亡者数の動向をみて、大腸内視鏡はCLEAN COLON を目指すのが、やはり、大腸癌予防の王道であったと確信した次第である。